第三話
じめじめと湿っていて、暗い洞窟の中を若い男女が歩いていた。
「なぁなぁトキ〜どこいきゃあいいんだよ?」
俺はひたすら前を歩きつづける男に向かって言った。
「知らん」
「はい?」
俺は一瞬目の前が真っ暗になった。もう3時間は歩いているのだ。
今更宛も無く歩いていただけだとは許せない。
「別に手がかりが無いって訳じゃねぇよ。この先に住んでいる爺さんが何か知ってるらしいから」
暴れてやろうかと思った途端、トキは心を読んだのか、そう言った。
その言葉で俺は安心する。
……なんだ、あるんじゃん。手がかり。
「ついでにいつになったら着くんだ?もう何時間も歩いてるぞ…」
一旦気を抜くと自分達が何時間も歩いていることに気付き、
どっと疲れが増したような気がしたのだ。
「あとすくなくとも●時間かかるな」
―いや、実際トキが発言したのは普通の言葉だった。
ただ俺の中で数字が勝手に伏せられただけだ―
「な……7時間〜?!」
「?別にたいした時間じゃねぇだろ?」
「トキはちげぇょ!!絶対人じゃねぇ!」
「あ?俺は人だっつうの、そりゃあ速さなら人じゃないと自覚してるがな」
「あぁそう!どーせ俺は遅いですよ!人だもん!」
「そっか……ノレンは人だからな?じゃあ置いてく。そろそろ合わせんのも疲れた」
「ちょ待って!すみませんでした!俺が悪かったです!」
「よろしい。じゃあ褒美に俺が爺さんの所まで連れてってやる。…乗りな」
トキはそう言ったが、乗るものが何処にもない。
「ん?何処に乗ればいいんだ?」
「俺の背中に決まってんだろ。他に何処があるんだよ?」
・・・・・・あ、背中ね?・・・え?背中?
「背中だ。おんぶしてやるって言ってんだろ。早く乗れ」
おぃおぃおぃ、俺をおんぶするって事は・・・ちょ、心の準備が!
「あ、そうか。お前一応女だったな。・・・・・・まぁいいか。乗れ」
「・・・・・・一応・・・。わかりましたですよ」
んで結局おんぶして貰う事になって・・・。
「ノレン・・・重っ」
「うるせー!!!最近仕事無かったんだからしゃーねぇだろ?!」
「まぁいいけど・・・。じゃあちゃんと掴まってろよ」
「おう!」
すると急にがくんとトキの体が下がったかと思うと、いきなり全速力で走りだした。
それとと同時に体がすごい力で後ろに引っ張られる。
「うぉおおおあぁあ!く、首!飛ぶ!」
「口閉じとけ!舌噛むぞ!」
これ以上叫んでもしょうがないので、なんとか空気抵抗をさけようとトキの肩に顔を埋めた。
ちらっと横を見ると洞窟の石壁がもの凄い速さで変わっていた。
こう見ると改めて、トキが凄いスピードで走っている事が解る。
そう思っているとだんだん眠くなってきた。
トキの体温のせいなのかな・・・人肌の温度が一番心地いいらしいけど・・・。
だんだん意識が朦朧としてきた・・・あー寝そう・・・・・・トキには悪いけど、寝よう・・・
あぁ・・・・・・それにしても、意外とトキって・・・
暖かいんだぁ・・・・・・